頭頂葉の損傷と障害
頭頂葉の役割
頭頂葉は触覚や、空間認知、視覚認知を司ります。
具体的障害
感覚の中枢である頭頂葉が障害されると、情報、耳から入った命令や音、指で触った感覚、目で見たもの等の統合や意味づけが不可能となります。
その結果、以下に記述するとおり、今まで認識できていたものが認識できなくなる失認症や、今までできていたことができなくなる失行症の症状が現われます。
失認症
手で直接触れたり音を聞いたりすると対象物を認知できる一方で、見ただけではそれが何であるのかが分からない症状をいいます。
視力や知能に問題があるのではなく、脳の損傷に原因がある点が特徴です。
空間における物の位置関係がわからないという症状です。
視空間失認の一つに半側空間無視があります。これは、自分が意識して見ている空間の片側を見落とすことを特徴とし、多くの場合、左側を見落とす傾向にあります。
頭頂葉の損傷を原因とする半側空間無視は視神経の損傷から生じる視野の欠損とは異なります。
視野が欠損している場合は本人が見えないことを認識していますが、半側空間無視の場合は、自分の右半分ないし左半分の概念が全くなくなっているため、本人に半分見えないという認識がありません。
左半側空間無視を例にすると、左手前に置いてあるおかずは手をつけずに残すとか、出入り口の左側に必ずぶつかるとか、広い廊下でも右側に寄って歩くといった現象があらわれます。
音が聞こえているにもかかわらず、耳から入る情報の意味内容を理解できない症状です。
感覚そのものに問題はないのに、手で触れたものが何であるか理解できない症状です。
身体のある部分の感覚が認知できなくなる、指が認知できなくなる、体の左右が分からなくなるといった症状を指します。
このような症状は優位半球の損傷に起因します。
その他にも、非優位半球の頭頂葉損傷では、体半分だけを無視して麻痺を認めなかったりします。
失行症
日常生活上の自発行為はできますが、同様の行為を人から命令されたり、自ら模倣するなど意図的に行おうとする場合にはうまくできないといった症状です。
観念運動性失行と異なり、やや複雑な日常生活上の動作を遂行する際にも障害がみられるのが観念性失行です。
自発運動に障害があり、口頭による命令でも道具を使用する場合には異常が生じる一方、模倣動作との関係では複雑でなければ障害はあらわれません。
これは服を着るときに体の半分を無視することから服が着衣できないという症状です。
非優位半球の頭頂葉連合野前の部分を損傷することで生じる障害です。
眼で捉えた形から空間を把握できない失行を構成失行といいます。
図形や物を模写できない、積み木で簡単な物が作れないといったことが具体例として挙げられます。
構成失行は優位半球だけでなく非優位半球を損傷した場合でも生じ得ます。
地誌的障害
地理・場所に関してのみの障害です。
認知症ではないのに、よく知っているはずの場所で道に迷ったり、新しい道順を覚えることが難しいといった症状が生じます。
これは非優位半球の頭頂葉連合野の損傷で生じます。