被害者が子供である場合の留意点
一般の成人が脳損傷を受けた場合、「急性期」といわれる症状回復期間がすぎれば、大きな回復は見られなくなることが多いといわれています。
一般の成人であれば、受傷後1年を超えた時点で、症状固定とすることが多いです。
しかし、被害者が子供である場合、事情は変わってきます。
一般の成人であれば、急に物忘れが激しくなったり、怒りっぽくなったりすることはご自身で気づかれることもありますし、家族や周囲の人から見てもわかりやすいものです。
これは、「大人なら急にそんな変化は起こらない」のが通常だからです。
しかし、被害者が子供である場合、被害者自身が成長し、被害者を取り巻く環境(特に学校)の変化も激しいため、脳損傷による影響を見落としやすいのです。
たとえば、交通事故被害者である子供の成績が下がってきた場合、これが高次脳機能障害によるものなのか、その子の成長がほかの子供と比べて遅いだけなのか、学校の授業の内容が高度になったためなのかの判断は困難です。
仮に、成績の変化が高次脳機能障害による場合でも、高次脳機能障害は体の機能には影響がないことも多く、一見、子供は元気に見えるので、事故による影響に気づけないこともあります。
また、子供が脳損傷を受けた場合、どの程度生活に困難をきたすかは、脳が受けたダメージの大小だけでなく、脳の成長が多く影響するため、子供の成長後に初めて生活への適用困難が生じることもあります。
当事務所でも、被害者のお子さんが受験勉強をするにあたって初めて脳の機能障害に気が付いたというケースがありました。
交通事故被害者が子供で、脳損傷を受けた場合には、成長を待たないと後遺症の残存に気づけないケースが存在します。
ですので、事故後は定期的に脳外科に通院することが必要になることもあります。
また、少児の場合、受傷から1年以内にもかかわらず症状固定してしまう場合で、事故について、早期に区切りを付けたいという親の意向も反映されている場合が多いと感じています。
少児の場合、症状固定時期の判断については、慎重に判断すべきでしょう。