要介護の後遺障害(1・2級)の場合の将来分の介護費用について
介護の方法
介護の方法としては、場所に応じて在宅介護か施設介護かで区別されるほか、介護を行う者に応じて次のように区別されます。
近親者付添人介護の場合の損害賠償額
近親者介護の場合の損害額は、一応の裁判における基準として、日額8,000円となります。
しかし、常時介護が必要か随時で良いか、必要な介護の内容などにより、およそ7,000~1万5,000円程度の幅があります。
職業付添人介護の場合の損害賠償額
家族の就労状況などの関係で近親者介護が全く出来ない場合や、日中は出来ないというような場合に、ホームヘルパー、介護施設職員などの職業付添人介護を利用しようとするときは、その実費相当額が損害と認められる傾向にあります。
しかし、必要な介護の程度等を考慮して、日額1~3万円程度で推移します。
例えば、2~3万円程度の介護費用は、24時間体制の看視が必要な場合、複数の職業介護人が必要な場合等に認定されています。
「介護は可能なら近親者が行うのが良い」という観点から1年間365日を240日(仕事の日)と125日(土日祝日等の休日)に分け、240日が職業人介護、125日が近親者介護と判断されるケースもあります。
また、平日の日中は職業人介護で、夜間は近親者が介護する、といったバリエーションもあります。
ただ、近親者に過度な負担をかけることのないようにも配慮すべきであり、主張の仕方等でどのような振り分けとなるかも様々です。
介護施設
介護施設には、介護保険を使える介護保険施設とそうでない施設とがあります(介護保険は65歳以上の方が利用できます)。
介護サービスについては、
- 在宅介護サービス(職員が被害者の自宅に訪問して介護を行うもの)
- 通所介護サービス(被害者が施設に通い介護を受けるもの)
- 入所介護サービス(被害者が施設に入り介護をうけるもの)
といった区別ができ、目的に応じた施設の区分として、次のようなものがあります。
介護保険福祉施設
日常生活で常に介護が必要な高齢者のための介護施設(特別養護老人ホーム)
介護老人保健施設
リハビリに重点を置き、在宅復帰を目的とする施設
介護療養型医療施設
介護のほか、医学的治療を受けることのできる長期療養施設
その他の施設
老人ホーム、ケアハウスなど
裁判所では、利用施設や介護の程度に応じてその必要性を判断し、実費相当額が損害と認められており、ケースにもよりますが、月25~30万円程度が多いです。
3級以下の高次脳機能障害の場合の将来分の介護費用について
3級以下の後遺障害は要介護の障害ではないので、原則として介護費用は認められません。
しかし、介護の必要性を積極的に主張立証すれば一定限度で介護費用が認められることがあり、その場合の介護の方法としては次のものが考えられます。
- 近親者付添人介護(家族による介護)
- 職業付添人介護(ホームヘルパー)
とりわけ職業介護については、必要性がない限り、損害として認められにくい傾向にあります。
必要性が認められる場合、近親者介護費用としては、裁判例では2~6,000円程度で推移しています。
1級・2級の場合と比べて介護費用が低額なのは、3級以下の高次脳機能障害の場合、食事・入浴・排せつなどの日常生活動作まで世話する必要はなく、看視や声かけで足りる場合が多いからです。
職業介護費用は実費相当額が認められますが、必要と判断される介護の程度、将来の介護に未確定要素が多いこと等が考慮され、額を制限されることもあります。
例えば、東京地判平成16年12月13日をみてみましょう。
この裁判例は、交通事故により脳挫傷等の傷害を負い、3級3号の高次脳機能障害(記銘力障害〔新しいことの学習障害〕、記憶障害〔物忘れ〕人格変化〔怒りやすい〕、右半身運動障害〔右手が使えない等〕)が残った被害者(症状固定時33歳)の介護費用について判断したものです。
裁判所は、被害者は目の前に食事を出しても指示がなければ食べ始めないなど、介護が必要な状態だが、常時介護することまでは不要であると判断しました。妻が週2日働いていることから、週5日の近親者介護費用6,000円を、身体能力が衰える67歳までの分について損害と認めました。
また、職業介護費用は、妻が仕事で家に居ない週2日分と、妻が67歳になってから被害者の平均余命までの分について、職業人介護費用日額1万850円の損害と認められました。
職業介護料は実費約1万7,000円だったのですが、介護の程度としては随時介護で足りることから、その6割に制限され、結果として、入通院期間の妻による介護費用と合わせて合計5,309万3,623円が損害と認められています。