後遺障害と自宅改造費用・車改造費用
交事故や労働災害等に遭い、重度の後遺障害が残ってしまった場合、自宅や車などを介護仕様・バリアフリーに改造したり、介護用品を購入したりしなければならないことがあります。
- 自宅の改造(出入口、浴室、トイレ、傾斜通路等)
- ベッド、イス等の備付・購入
- 自動車の改造
自宅の改造費は、下記のとおり1,000万円を超えるケースもあり、重要な損害項目なのですが、「どのような症状の場合にどのような設備が必要なのか、どの範囲・どの程度まで賠償されるのか」といった知識は、事故を取り扱う弁護士でも知らない人がいるでしょう。
重度の後遺障害が残ってしまった場合の改造費等について、以下、自宅と車の改造費用について説明いたします。
自宅・車の改造費用
一般に、自宅や車の改造費については、被害者の後遺症の内容及び程度等に照らして必要性が認められる場合は、実費相当額が損害として認められています。
しかし、必要程度を超えて高級になっている場合や、家族に対しても便益があるような場合は、その分減額されることもあります。
将来の買替費用や改造費用についても、耐用年数が比較的短い自動車やベッドなどについては、請求することが可能で、ケースとしては次のようなものがあります。
名古屋地判(平成14年11月1日)
認められた損害
家屋改造費:合計約1,459万円
・全面的改造(増改築、外部改装、内部改装、屋根瓦葺替え・解体工事)
※バリアフリー工事の市からの助成対象でない工事費用も介護に必要として損害と認められました。※一方で、他に建具取替工事等もしていましたが、介護のために必要な工事とはいえないとして、その費用約300万円は損害とは認められませんでした
後遺症の内容
高次脳機能障害、四肢不全麻痺
症状固定後の被害者の状態
日常生活活動が何もできず、ほぼ寝たきりの状態で常に介護を要する状態
大阪地判(平成15年1月27日)
認められた損害
家屋改造費:合計約90万円
・トイレ改造
・浴槽入替
・階段手すり工事
※約150万円の改造費用のうち、トイレ、浴槽などの共用部分の改造については、家族の利便にも資することから、150万円の6割を本件事故と関係ある損害と認めると判断されました
後遺症の内容
高次脳機能障害、左上下肢不全片麻痺
症状固定後の被害者の状態
排泄、食事などの生命維持に必要な身辺動作についてはほぼ自立し、自宅内での看視は常時必要とするものではないが、外出に際しては看視が必要な状態
横浜地判(平成14年9月25日)
認められた損害
家屋改造費:合計約805万
・浴室改造
・トイレ改造
・スロープ(傾斜通路)工事
車輌改造費:合計約214万円
※通院等のために介護仕様車両を要するので、既に支出した改造費のほか,平均余命までの6年ごとの改造費が損害と認めると判断されました
後遺症の内容
高次脳機能障害、開口制限、半盲、四肢筋力低下、両目視力低下等
症状固定後の被害者の状態
食事や排泄は半介助、入浴は全介助を要し、記憶力や判断力が低下、性格も一変して凶暴性を増している状態