賠償基準と範囲
見舞いは、被害者の安否や健康状態を心配して訪ねることであり、見舞いのための交通費が損害と認められるのは「家族の心情からお見舞いに行くのが通常だといえるかどうか」が判断基準となります。
したがって、高次脳機能障害が生じるような重大な傷害を受けている場合(傷病名:脳挫傷、びまん性軸策損傷、急性硬膜下血腫、外傷性くも膜下出血等)は、通常、見舞いのための交通費も損害と認められます。
しかし、症状が回復するにつれ、お見舞いに行く必要が軽減するとして、損害と認められにくくなる傾向があります。
なお、タクシーを利用したとしても、バスや電車などの公共交通機関の利用が可能である場合には、タクシー利用を必要とする特別な理由がない限り、その公共交通機関の利用料金分の交通費しか認められません。
見舞いのための交通費(の一部)が損害として認められた判例
東京地判平成10年1月30日
交通事故で頭蓋底骨折、脳挫傷等の傷害を負い、原告(被害者)が787日間入院している間、「原告の両親は高速道路を利用して自動車で、少なくとも120回は原告のお見舞いに訪れている…(中略)…傷害内容によると、原告の両親が見舞いのため右病院を訪れることは、その心情として理解でき、そのうち40日間を本件事故と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である」とした裁判例
札幌地判平成13年12月5日
交通事故脳挫傷、くも膜下出血等で266日間入院した1級3号の被害者(66歳)について、子が見舞いのため単身赴任先から帰宅した際の電車及びバスの利用料金分(7,800円)を、約1年間で78回の見舞い全てについて損害と認め(合計約60万円)、被害者の症状(意識不明の状態から回復後、痴呆、失禁等)を考慮すると、この程度の回数の見舞いをすることは親を思う心情から当然であると判示した裁判例
※ただし、実際は78回のうち52回は約3時間かけて車で見舞いに行ったものであり、その都度ガソリンや高速道路代約1万2,000円の支出があったのですが、時間や距離を考慮すると電車等の利用が合理的であったとして、電車等利用料金7,800円の限度でしか認められていないということに注意する必要があります。