高次脳機能障害の等級認定のしくみ⑥
神経系統の障害に関する医学的意見について
自賠責保険(共済)の定型書式として、「神経系統の障害に関する医学的意見」が用意されており、認定手続きにあたってはこの書類の作成を医師にお願いすることになります。
この書式では、認知障害、行動障害及び人格変化などについて、医師が医学的見地にたって作成してもらうことになります。
しかし、ここで注意すべきことは、医師は被害者の症状の全てを見ていない(というよりも物理的に見ることが困難)ということです。
高次脳機能障害の症状は様々な現れ方をします。
そしてその症状は、他者とのコミュニケーションの過程において徐々に明らかになっていくのです。
「あれ、さっき言ったこと覚えてないのかな?」「なんかボーっとしていることが多いな」 「こんなに怒りっぽかったっけ?」など、日々の生活の中でその症状が具体的に見えてきます。
医師は、限られた時間の中でしか被害者の方と接することができませんし、また、病院というある意味非日常的な空間では、表立って症状が出てこないこともあり、気付くことができない場合もあります。
ですので、「神経系統の障害に関する医学的意見」を作成してもらうにあたっては、ご家族の方々が医師と十分にコミュニケーションをとり、被害者の家庭内・職場内での様子を伝え、認知障害など数値化できるものは神経心理学検査を依頼していくなど、積極的に行動していく必要があります。
これらの活動をしないままに「神経系統の障害に関する医学的意見」を作成してもらった場合には、ご家族の方々が感じている被害者の症状とどこかズレているものができてしまうおそれがあります。(もっとも、自賠責保険においても、「神経系統の障害に関する医学的意見」が被害者の症状の全てを網羅しているとは考えていません。ご家族の意見も重視され、「日常生活状況報告書」として提出することとなります。)